修理費は必ずしも全て損害として認められるわけではありません。
修理費については、そもそも修理すること自体が可能であるのか(言い換えれば、修理が不能であるとして買替えを認めるべきか)という点と、修理が可能であるとされた場合の修理の程度と相当性が問題になります。
まず、修理が可能であるかどうかという点については、
①物理的に修理が不能なとき
②経済的に修理が不能なとき
③車体の本質的構成部分に重大な損傷が生じたとき
には、修理が不能であり買替えを認めるべきであるとされています(最高裁判所昭和49年4月15日判決)。
①は、典型的な全損として扱われる場合です。
②は、修理見積額が当該車両の時価(中古車市場における価格)を超える場合です。この場合には、現実に車両価格を超える修理費用を支出していても、当該車両の時価の限度でしか賠償請求できないということです。
簡単に言いますと、100万円の価値しかない車に200万円の修理代はかけられないということで、時価が100万円の車に対しては、どんなにお金をかけたとしても100万円の修理代しか認められませんよ、ということです。
最近の下級審の裁判例では、「修理費と比較すべき車両の評価額は車両時価額のみならず車検費用、車両購入諸費用等を含めた額」とするものが増えています(東京地裁平成14年9月9日判決、同平成15年8月4日判決等)。
ただし、時価額を超える修理費用の請求が可能性が全くないわけではありません(東京高等裁判所昭和57年6月17日判決等)。
③の車体の本質的構成部分として裁判上現れるのはフレームが多いようですが、実際に買い替えが認められた裁判例はそれほど多くありません。
修理の程度と相当性が問題なるのは、塗装方法として修理部分を中心とした部分塗装ではなく全塗装が許されるか争われるケースや、ボディーの板金修理ではなくパネル交換までする必要があるかどうかが争われるケースです。